世界最大の交通事業者連合組織「UITP」によると、MaaSはこう定義されている。「MaaSとは、さまざまなモビリティサービス(公共交通機関、ライドシェアリング、カーシェアリング、自転車シェアリング、スクーターシェアリング、タクシー、レンタカー、ライドヘイリングなど)を統合し、これらにアクセスできるようにするものであり、その前提として、現在稼働中で利用可能な移動手段と効率的な公共交通システムがなければならない。このオーダーメイド・サービスは、利用者の移動ニーズに基づいて最適な解決策を提案する。MaaSはいつでも利用でき、計画、予約、決済、経路情報を統合した機能を提供し、自動車を保有していなくても容易に移動、生活できるようにする」
他にもさまざまな定義があるが、交通の新しい選択肢を提供し、事業者とユーザーが双方向でつながり、オーダーメイドのサービスによってマイカーよりも便利で持続的なサービスと価値を提供するものだという点は共通している。
MaaSのステークホルダーは以下の4つだ。
(1)移動する人(ユーザー)
(2)移動させる主体(交通事業者)
(3)MaaS事業を行う人(MaaSオペレーター)
(4)地域の周辺事業者や自治体
1つの組織が2つの役割を兼ねている場合もある。たとえば鉄道会社がMaaSを展開する場合は、MaaSオペレーターと交通事業者を兼ねている。
MaaSオペレーターがMaaSのサービスを提供する場合には、ユーザーの利便性向上に加え、交通事業者の経営効率化やサービス向上が目的となることもある。また周辺事業者や自治体を巻き込んで、地域の課題を解決するためにMaaSを行う場合もある。
MaaSビジネスを始める上では、それぞれのステークホルダーの立場や考え方を把握し理解したうえで進めていくことが必要だ。より革新的なサービスであればあるほど、与えるインパクトが大きくなる一方で、反発や誤解も生じやすくなるからだ。
MaaSのユーザー向けの基本的な機能としては「ナビゲーション機能(地図、経路検索、運賃や所要時間表示)」「予約機能」「決済機能」「メッセージ機能などの付属機能」がある。加えて事業者や行政機関向けには「データの可視化機能」「交通機能分析機能」「交通制御機能」があり、これらを「MaaSコントローラー機能」と呼ぶ。
MaaSコントローラー機能とは、モビリティとユーザーの行動をデータに基づいて調整する機能のことだ。たとえば、ユーザーがMaaSアプリで経路検索をした際に、ユーザーの検索数の傾向や過去のデータ分析から混雑や渋滞が予想されたとしよう。そこでMaaSコントローラー機能を使うと、ユーザーに別の交通手段を推薦したり、交通事業者に増便をリクエストしたりして、需給の平準化を図れるようになる。この仕組みは、災害時やイベントで混乱が予想されるときなど、広く応用可能だ。
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