SDGsの基礎

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SDGsの基礎
出版社
出版日
2018年09月03日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

環境汚染、気温の上昇、乱獲による生態系の乱れ、途上国を中心とした人口増加……。いま私たちを取り巻く環境は、多くの面で危機に瀕している。長らく続いた世界的な工業化や経済中心主義により、地球的規模で資源が失われ、このままでは人類の存続すら危ういという。

このような危機的状況を回避し、末永く持続可能な社会を営むために私たちは何をすればいいのか。ここで注目すべきなのが「持続可能な開発目標」、通称SDGs(Sustainable Development Goals)である。いま私たちが抱える問題は、国家単位では太刀打ちできないほどに大きい。国際機関、各国政府、企業、組織団体が一体となり、オールアース(ALL EARTH)で臨まなければ到底解決できないほどに。そんなときSDGsは、社会の「あるべき姿」を描き、その実現に向けた近未来への羅針盤の役割を果たしてくれる。

本書は非常に優れたSDGsの入門書だ。SDGsの成り立ち、日本政府の取り組み、企業における役割や戦略などが、段階を踏んで理解できるようになっている。各章ごとにそれぞれの分野のエキスパートが執筆しているため、偏った内容に陥っていないのも特徴だ。

SDGsの“はじめの一冊”として、これほど最適な本はない。SDGsに興味を持っている方はもとより、幅広い方々にぜひ手に取っていただければと思う。地球の未来は、いつだって他人事ではないのだ。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

沖 大幹(国際連合大学 上級副学長・国際連合 事務次長補)
小野田 真二(地球環境戦略研究機関(IGES)持続可能性ガバナンスセンター研究員)
黒田 かをり(一般財団法人CSOネットワーク 事務局長・理事)
笹谷 秀光(株式会社伊藤園 顧問)
佐藤 真久(東京都市大学 環境学部 教授)
吉田 哲郎(地球環境戦略研究機関(IGES)持続可能性ガバナンスセンター リサーチ・マネージャー)
以上50音順

本書の要点

  • 要点
    1
    持続可能な開発目標(SDGs)は、2030年時点での「あるべき世界の姿」の指標となる国際的な目標である。「だれ一人取り残さない(No One Left Behind)」をコンセプトに、先進国と途上国の経済格差問題の解決、そして持続可能な社会の構築をめざしている。
  • 要点
    2
    SDGsの実現には企業の協力が不可欠だ。ユニリーバやコカ・コーラといった世界的企業もSDGsに取り組んでおり、環境に配慮しながら利益を上げるという新しいビジネスモデルを創出している。
  • 要点
    3
    大きな変化の時代を乗り切るには、多様性・異質性を重視した「マルチステークホルダー・パートナーシップ」が欠かせない。

要約

持続可能な開発目標

SDGsの特徴と成り立ち
Jakarin2521/gettyimages

「持続可能な開発のための2030アジェンダ(2030アジェンダ)」が2015年9月の国連サミットで採択された。2030年を目処に、先進国と途上国が取り組むべき目標として設置された画期的合意である。基本コンセプトに「だれ一人取り残さない(No One Left Behind)」が掲げられており、グローバル化による地域経済格差問題を解決しなければ、持続可能な成長は見込めないとしている。このコンセプトを分野別目標としてまとめたものが持続可能な開発目標、通称「SDGs」だ。

いま地球は非常に厳しい状態に置かれている。生態系の破壊、気候変動、土地利用変化、新規化学物質による汚染、成層圏オゾンの破壊など、人間の活動が地球システムの機能に甚大な変化を引き起こしている。すでにいくつかの面では限界を超えつつあるという研究結果もあるほどだ。地球環境が限界を迎えるとき、そこに持続可能な開発や成長はありえない。

SDGsが採択されるまでには、ミレニアム開発目標(MDGs)とリオ+20という2つの流れがあった。MDGsは2000~2015年までの開発分野における国際社会の目標だったが、目標の達成度が国・地域により異なったことや、経済・環境目標の数が不十分だったという指摘がされている。一方のリオ+20(2012年)では経済、社会、環境のあらゆるレベルで、持続可能な開発を組み込むことが宣言された。

17のゴール、169のターゲット

SDGsは17のゴール、169のターゲット及び指標で構成されており、環境、経済、社会における諸問題の包括的な解決をめざしている。どれも非常に野心的な内容で、未来のあるべき姿から逆算して必要な手段を求める「バックキャスティング」という方法がとられているのが特徴だ。

たとえばゴール12「持続可能な生産消費形態を確保する」に対しては、ターゲット12.5「2030年までに廃棄物の発生防止、削減及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する」などが対応する。ゴールに対する、より具体的な到達点・経過点がターゲットに当たるといえよう。

SDGsのゴールのほとんどは環境に関するものだ。たとえばゴール6(水)、7(エネルギー)、11(都市)、13(気候変動)、14(海洋)、15(生態系・森林)などは、その名前からして環境に直接関係することがわかる。またゴール5(ジェンダー・平等)は一見環境と関係なさそうだが、経済的資源に対する同等の権利など、自然資本へのアクセスの改善がターゲットのひとつとして設定されている。

日本政府の取り組み
Wand_Prapan/gettyimages

2016年5月、日本でも「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」が設置された。推進本部の本部長に内閣総理大臣、副本部長に内閣官房長官と外務大臣が置かれ、全閣僚が構成員になっている。本部の下には行政、NGO、有識者、民間セクター、国際機関など、関係者が意見交換をする「SDGs円卓会議」が設置され、同年12月には「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」が策定。8つの優先課題と具体的施策が盛り込まれ、翌年12月は「Society 5.0の推進」(後述)、「SDGsを原動力とした地方創生」、「SDGsの担い手としての次世代や女性のエンパワーメント」という、3つの柱からなる『SDGsアクションプラン2018』が作られている。

また環境省は「SDGsステークホルダーズ・ミーティング」も開催している。企業や市民などさまざまな関係者が集まり、優良事例をシェアするのが目的だ。これまで6回開催され、SDGs拡大のための意見交換や情報共有がされている。

【必読ポイント!】企業におけるSDGs

SDGsの優良企業

SDGsの必要性は、国家政府のみならず企業にも浸透してきている。

サステナビリティ(持続性)における優良企業として突出しているのが「ユニリーバ」だ。

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要約公開日 2018.12.11
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