まずは、現在注目されているインフラ事業のトレンドの一部を分野別に紹介する。
・高速道路
新東名高速道路と新名神高速道路の整備が進むなか、東北地方では復興事業の一環として、三陸沿岸道路と常磐自動車道を建設中だ。また、首都圏3環状道路は、既存の交通網との交差や地下の出水などで高い施工難度を求められながら整備が進んでいる。一方、首都高速道路では40年以上前に開通した路線の老朽化対策として更新・修繕計画をまとめた。
・鉄道
高速鉄道では、北陸新幹線と九州新幹線の延伸や北海道新幹線の新設、東海道新幹線の大規模改修が進み、リニア中央新幹線のプロジェクトも始動した。また、東京圏では、空港へのアクセス向上や再開発を先導して、渋谷駅の大改造や、約50年ぶりとなるJR山手線の新駅の整備が注目を集めている。
・ダム、河川、下水道、水路
豪雨災害や少雨による渇水の頻発により、水をめぐるインフラ整備も課題となっている。洪水の調節機能などを持つダムについては、既存のダムを改修して機能向上を目指している。また、豪雨に備えて、堤防の構築や拡幅を行う事業、遊水地を設置する事業が全国で進む。地震時に堤防が損傷するリスクを考慮して、液状化対策を進める動きも目立ってきた。一方、都市部では都市の地下に雨水を貯留するための施設が建設され始めている。
・砂防、法面、地盤、造成
豪雨や火山噴火、地震によって引き起こされる土砂災害の未然防止のため、数十年という長いスパンで砂防事業を進めている。また、東日本大震災の被災地では復興事業として液状化対策が、東京湾や大阪湾では廃棄物処分場を形成する埋め立て工事がそれぞれ続いている。
・エネルギー
東日本大震災が招いた原発事故を機に、日本のエネルギーのベストミックスの在り方が問われる今、既存原発の安全対策がいっそう強化されている。また、原発を補う大規模なエネルギーインフラの整備の一環として、鹿島港沖の洋上風力発電所や石狩湾新港発電所などの建設が進んでいる。
2013年末に発表された、約63kmの首都高速道路の大規模更新・修繕計画。橋梁の架け替えなど大掛かりな工事が発生し、総額約6300億円が投じられる。対象範囲に共通する課題は、工事に伴う交通渋滞をどう軽減するかである。周辺にスペースがあれば仮設の迂回路を設置し、設置が難しい場所では車線数を減らして交通を切り回すという。設計面では、維持管理しやすい構造形式や長期的な耐久性を持つ材料などがポイントになりそうだ。
最優先課題は、1号羽田線の東品川桟橋・鮫洲埋め立て部である。平日の1日平均で約8万台の交通量をカバーできるだけの、仮設の迂回路の設置が必要である。海面から15~20mの高さの高架橋に架け替える際には、近接するモノレールの運行に支障のない工事が求められる。2014年度から約3億円の調査・設計が始まっている。
事業化に向けてさらなる協議が必要なのは、都心環状線の銀座―新富町間と、竹橋―江戸橋間だ。前者は、都市再生と大規模更新を連携して実施するモデルケースになっており、道路上部空間の高度利用や、S字カーブの走りやすい線形への変更が検討されている。
リニア中央新幹線の新設事業は、JR東海が2027年までに、品川―名古屋間を超電導磁気浮上方式の列車によって最短40分で結ぶというものだ。中間駅の整備費や車両購入費を含めた総工事費は、東京―名古屋間で5兆5235億円を見込んでいる。南アルプスを横断する最短ルートで設定した路線延長は286kmで、その86%をトンネルが占める。
ルート選定では、断層など地山がもろい部分をできるだけ回避し、中央構造線など、横断を避けられない箇所では横断延長を短くする。東京や名古屋などの都市部では、市街地や住宅地への影響に留意し、大深度でのトンネルとした。関東平野南部、多摩丘陵などで、湧水により地山の自立を保ちにくくなったり、流砂現象が生じたりするリスクがあると想定している。
土木工事の中心となるトンネル工事では、大きな難所や課題を乗り越える必要がある。
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