東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」
東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」
東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」
出版社
KADOKAWA/中経出版
出版日
2014年10月14日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

日に日に便利になる私たちの生活の裏には、「人工知能」の存在が欠かせない。部屋の中はお掃除ロボットでピカピカになり、スマートフォンに話しかければ即座に答えが返ってくる。車の自動運転も実用化されようとしているし、ボードゲームの世界では、すでに人工知能が人間に勝利を収めているものもある。

本書は、そんな人工知能の現状と未来について、2人の有識者が語ったものである。コンサルタントである塩野が、東大准教授で、人工知能の研究者である松尾に対して様々な疑問をぶつけていく。私たちが夢見た未来はすぐそこまで来ているのか? それとも近づいているのは、ロボットたちが人間に牙をむく、SF小説のような未来なのか? 素朴な疑問からスタートする対談はどんどん哲学的になり、人工知能を知るためには、まずは人間について理解しなくてはならないのだと気づかされる。ビッグデータの意義や、近年画像認識の分野などで注目を集めるディープラーニングの仕組みなど、今さら聞けないキーワードについての知識も豊富で、この分野の入門書としてはうってつけだろう。

人類最後の発明とも目される人工知能は、日本復活の鍵を握っているという。本書では、人工知能の仕組みやデータ分析は、大人の教養として必修になるだろうとまでいわれている。そんな未来に遅れを取らないためにも、ぜひ押さえておきたい1冊だ。

著者

松尾 豊(まつお・ゆたか)
東京大学大学院工学系研究科総合研究機構/知の構造化センター/技術経営戦略学専攻 准教授。
1997年、東京大学工学部電子情報工学科卒業。2002年、同大学院博士課程修了。博士(工学)。同年より、産業技術総合研究所研究員。2005年10月より、スタンフォード大学客員研究員。2007年10月より現職。2002年、人工知能学会論文賞、2007年、情報処理学会 長尾真記念特別賞受賞。人工知能学会編集委員長、第1回ウェブ学会シンポジウム代表を歴任。専門は、Webマイニング、人工知能、ビッグデータ分析。

塩野 誠(しおの・まこと)
株式会社経営共創基盤(IGPI)パートナー・マネージングディレクター。IGPIシンガポールCEO。
慶應義塾大学法学部卒、ワシントン大学ロースクール法学修士。ゴールドマン・サックス証券、ベイン&カンパニー、起業、ライブドア等を経て、現職。主に通信、メディア、テクノロジー、エンターテインメント領域の企業や政府に対し戦略のアドバイスを行ない、政府系実証事業採択審査委員も務める。著書に『プロ脳のつくり方』、『リアルスタートアップ ~若者のための戦略的キャリアと起業の技術~』、『20代のための「キャリア」と「仕事」入門』などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本では1980年代から人工知能の仕組みが検討されていた。近年ビッグデータが取得できるようになったことで、当時実現できなかったことが可能になってきている。
  • 要点
    2
    コンピューターは膨大なデータの処理が得意だが、逆に人間は、少ないサンプルから似たパターンを見つけることを得意とする。抽象化のために「近似」の判断基準をもつことが人工知能の今後の課題である。
  • 要点
    3
    人工知能がデータ分析やパターン認知を担うようになったとき、人間に残される役割は、意思決定をすることと、責任を取ることの2つになるかもしれない。

要約

【必読ポイント!】 「人工知能」は人間を超えるか?

人工知能とは何か

人工知能とはコンピューターのプログラムのことだが、従来型のプログラムとの最大の違いは、状況に応じてふるまいを変えることができるという点である。もともと日本では、1980年代から情報の内容によって処理形態を変えるような人工知能の研究が進んでいたが、当時は処理の元となるデータが不十分だった。しかし近年ウェブの広がりにより、膨大なデータを取得し、処理することが可能になった。これまでは「もし〇〇ならば××せよ」というようにルールを大量に定義してやる必要があったが、ビッグデータを読み込んで、自分自身でルールを学習することができるようになったのである。それにより、人工知能は加速度的に賢さを増している。

人工知能の「怖さ」の正体
©iStock/abidal

もともとは人間を超えようと始まった人工知能の研究だが、想像以上に人間の知能は優れており、超えることは困難だとわかってきた。そのため現在では、人間よりも賢い知能の実現を目指そうとする「強いAI」派と、普通のコンピューターより少し知的な仕組みを作ろうとする「弱いAI」派の2つの流派に分かれて研究が進んでいる。

「強いAI」が実現すれば、やがて人間より賢い人工知能が生まれ、人間の仕事は奪われてしまうかもしれない。もしも人工知能が、自身より少しだけ賢い人工知能をつくり出すことができるなら、無限に賢い人工知能が瞬く間に誕生する。一説には、2045年にはコンピューターは人間を超え、開発と進化の主役となる「技術的特異点」(シンギュラリティ)が訪れるともいわれている。

人工知能が人間を超える可能性に対し、塩野は危機感を抱いているが、松尾は楽観的である。現状、経験から学習する能力や、それを次世代に受け継ぐ力は人間のほうがはるかに勝っているし、人間を支配するようにプログラミングされた人工知能をつくることは非常に難しいからだ。

松尾はむしろ、人工知能の予測精度の高まりに対して恐怖心を示している。人工知能は、ビッグデータの中から人間には発見できないようなパターンを見つけ出せるし、見つけ出した事実をそのまま認識してアクションを起こすことができる。

一方人間は、原因と結果がわかりやすい「因果関係」にとらわれがちである。たとえば、「おむつとビールがなぜか一緒に売れる」という現象があったとき、人工知能はためらいなく両者を並べて売ることができるが、人間は「若いお父さんが一緒に買っている」というような解釈をして納得しないとアクションを起こせない。松尾は、社会を変えるような人工知能は、人間のようにふるまうものではなく、ただただ予測精度の高い「箱」のようなものになるだろうと予想している。

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要約公開日 2016.02.11
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