中国は「デジタル先進国」だ。特に「モバイル決済」の普及は中国社会を大きく変えた。
主に使われているのは2つで、アリババ・グループの「アリペイ」とテンセントの「ウィチャットペイ」だ。この2つがあれば、ショッピング、タクシーや電車などの交通費の支払い、自動販売機、さらには個人間の割り勘まで、ありとあらゆる決済が完結する。
モバイル決済が浸透したことで、消費者の購買行動のデータが取れるようになり、「この人が何をどこで買うのか」が可視化できるようになった。それによって可能になったのが、「信用経済・評価経済の活用」である。そのうちの1つに、アリババ傘下の金融会社「アント・ファイナンシャル」が2015年にはじめた「ジーマ・クレジット(芝麻信用)」がある。
ジーマ・クレジットはアリペイの機能の1つだ。アリペイでの購買履歴や提携サービスの利用状況、アリペイ上の友人のネットワークなどといった膨大なデータを収集してAIで分析し、ユーザーの「信用スコア」が算出される。対象者は5億2000万人だ。
信用スコアの点数が高い人は、さまざまなメリットを享受できる。たとえば、アリババ提携企業が提供するサービスを受ける際に賃貸の敷金やレンタカーのデポジットが不要になる、海外の渡航ビザの取得プロセスが短くなる、賃貸物件を借りやすくなるなどだ。
企業側にもメリットはある。信用スコアが、その人を雇うかどうか、物件を貸すかどうかなどの指標になるのだ。その結果、リスク回避や、与信確認にかかるコストの削減が実現できる。
信用スコアなどの評価システムが登場したことで、中国人は、「善行を積むと評価してもらえる」と考えるようになった。タクシーの配車アプリ「ディディ(滴滴、Didi)」などはその最たる例だ。
ディディでは、主に3つのデータを使って、ドライバーごとのユーザー満足度を計測している。
1つめは、「配車リクエストに対する応答時間」である。ユーザーが配車をリクエストした際、ドライバーがすぐにリアクションしたかどうかだ。
2つめは、「配車リクエストを受けた後のユーザーを待たせた時間」だ。配車リクエストが完了すると、ユーザーに到着推定時刻が通達される。ドライバーがこの通達通りに到着しているかどうかが計測される。
3つめは、安全運転かどうかだ。これは、GPSとジャイロセンサー(加速度センサー)から収集されるデータによって判断できる。
3,400冊以上の要約が楽しめる